Research Abstract |
最近の高級車では車内音の低減が厳しく求められており,ディスクブレーキ鳴きによるクレームが後を絶たず,自動車業界ではこの鳴き音の低減が急務となっている.しかしながら,このディスクブレーキ鳴き現象の発生メカニズムは未だ解明されていない.本研究は,その発生メカニズムに対して理論的および実験的解明を行った.また,自励振動の制振に関する研究として,ディスクブレーキのキャリパ部に動吸振器を取り付けることにより,鳴き現象の完全な制振実験を行った. まず,(1)実際に問題となっているディスクブレーキシステムを動作させる実験装置を作成し,鳴きが発生したときのキャリパの振動方向およびディスクの振動モードを測定した.また,このような自励振動系では連成固有振動数が重要となるので,各制動油圧においてインパルスハンマーを用いて打撃試験を行った.(2)この種の自励振動はチョークの振動と同様に,接触角度(位置)が系の安定性に大きな影響を及ぼすことを考慮し,パッドを部分的に切除する実験を行い,パッドとロータの接触領域の変化が鳴き現象に対してどのように影響するかを調べた.その結果,上記(1)で測定した振動モードの鳴きが抑制される切除領域を実験的に確認することができた.(3)連続体としてモード解析したディスクにキャリパの並進および回転方向の自由度を考慮した理論解析モデルを作成し,線形多自由度系として固有値計算を行い,鳴き現象が発生する条件および複素モードを数値計算的に求めた.その結果,定性的に実験結果との良い一致を確認した.(4)ブレーキ鳴き現象の積極的防止対策として動吸振器をキャリパ上に取り付け,実験的に鳴き現象の制振を試みた.その結果,動吸振器を取り付けることにより鳴き現象を完全に制振することができた.
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