Research Abstract |
ヒトが歩行時に膝,足首などを屈曲させることで衝撃を吸収していることは知られている.しかし,これら歩行,走行などの着地は能動的で予想しながらの行動であり,それに伴った筋活動を行っていると考えられる. 今回の研究は,ヒトの意識下・無意識下での落下時に各関節にどれだけの衝撃加速度が発生するか計測し,それと同時に起こる筋活動を観察し接地形態とどのような関係があるかを明らかにすること目的とした.実験は高さ80mmの落下台(自作:レバ-操作により足底部の扉が開き落下する構造)から直立した状態で,無意識の状態と,その比較をするため意識させた状態で落下させ,衝撃加速度(踵骨隆起部,足関節内果,脛骨粗面,大腿骨顆部),筋電計(大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,腓腹筋),および床反力計の計測を行った.無意識下の状態で実験するため被験者に数題の暗算をさせ,その思考中に背後から操作して落下をさせた.着地の方法は膝が屈曲しないように直立状態から落下させた.意識下での実験は落下の数秒前からカウントダウンを行い,着地に備えさせた.屈曲による衝撃吸収を行わないものと,膝を曲げできるだけ衝撃吸収を行う実験を行った. 実験の結果, 1.無意識下-膝直立では,衝撃加速度は足関節関節と膝関節で大差がなく,上体への伝播する衝撃も大きいと思われた.またその時の筋活動は着地後におこり,しかも大きな活動をしていた.床反力計の値が最も大きく,ピーク値に達する時間も最も早かった. 2.意識下-膝直立では,1.と同じく衝撃加速度は足関節関節と膝関節で大差がなかった.しかし,その時の筋活動は着地前より行っており,着地に対する準備を行っているのではないかと思われた.筋活動は1.に比べ3分の2程度になっていた.床反力計の値は1.に比10%程度小さくなっており,ピーク値に達するまでの時間も5%程度遅くなっていた. 3.意識下-膝屈曲では,踵骨隆起部の衝撃加速度は1.,2.と比べ小さくなっているが大きな差はなかった.それに対して脛骨粗面,大腿骨顆部では著しく小さくなっていた.筋活動も3つの中で最も少なく,特に1.に比べると3分の1以下であった.床反力計の値はピーク値が半分以下になり,ピーク到達時間も約2倍の時間がかかった. 以上のことから,ヒトは着地の際,衝撃吸収のために筋を緊張させ,衝撃を関節の屈曲により軽減させており,その衝撃は特に足関節で行われているということがわかった.現在この結果を発表(どの講演会かは未決)するための準備中である.
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