Research Abstract |
最近,擬似乱数生成器としてカオスを利用しようという試みが行われているが,この際,カオスが従来の擬似乱数と比較して,乱雑さに関する性質の良い乱数であるか否かが問題である.カオスは,確定系で観測される不規則現象の総称で,最も単純な確定系である一次元差分方程式x_<n+1>=γ(x_n),(n=0,1,2,・・・)でも観測される.但し,γは区間からその区間への写像である.ある系列が良い乱数か否かの判断は非常に難しく,また使用目的によっても当然その基準が変わるが、良い乱数として,“自己相関関数がデルタ関数,すなわちパワースペクトルが一定である(白色雑音である)"という条件がしばしば課せられる.この条件を満たしているカオス解を生成し得るテント写像やロジスティック写像,およびチェビシェフ写像等は,擬似乱数生成器として利用できる可能性があるが,そのようなカオス解が本当に良質な乱数であるか否かが議論されなければならない.通常,情報理論等で仮定される,理想的な乱数系列とは,“i.i.d."と呼ばれる“独立"な系列である.決定論的アルゴリズムから独立な系列を得ることは困難であり,一般には,ある種の相関が残ることになる.また,自己相関関数がデルタ関数であることは,独立な系列であるための必要条件に過ぎず,必ずしも独立性を保証するものではない.独立な系列ならば,これをある実数値関数で非線形変換した後の系列もデルタ関数的な自己相関関数をもつ.本研究では,まず,元の系列{x_n}^^∞=0を2乗した系列{x^2_n}^∞_n=0の自己相関関数がデルタ関数であるか否かを調べることで、独立性の一つの必要条件を満たすかどうかを検定し,さらに,これを拡張して,N乗した系列{x^N_n}^∞_n=0の自己相関関数を評価した.その結果,3次以上のチェビシェフ写像から生成されるカオスの実数値系列が任意のNに対してデルタ関数的な自己相関関数を有することが明らかになった.
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