Research Abstract |
本研究では,レーザー長光路吸収法などの光学的遠隔計測手法による微量同位体を含む大気微量分子の測定の可能性に関する研究を行った。レーザー長光路吸収法は,最も高感度な大気微量分子の光学的遠隔計測手法の一つである。現在,衛星搭載レトロリフレクターを用いた地上衛星間レーザー長光路吸収測定や,静止衛星にレーザー受信装置を搭載し,地上の複数の地点からレーザーを送信する方法等が研究されている。一方,微量同位体を含む大気微量分子の測定は,大気の物質循環の解明や,原子力利用に関する環境問題などにとって,重要な課題である。 本研究では,地上にレーザー送信システムを設置し,静止衛星にレーザー受信システムを搭載した,地上-衛星レーザー長光路吸収法を,赤外領域で行った場合の,微量同位体を含む大気微量分子の測定の可能性を以下の手順で検討した。 (1)大気の31種の分子の吸収線のデータベースであるHITRAN92を用いて,微量同位体を含む大気中分子による地上からの大気圏外までの大気の吸収スペクトルをモデル計算するプログラムを開発した。HITRAN92には,赤外領域を中心に,70万本の吸収線が含まれている。(2)開発したプログラムを用いて,微量同位体を含む大気中分子の吸収スペクトルのデータベースを作成した。(3)各微量分子毎に,最適な測定波長の決定を行った。 この結果,H2O,O3,N2O,CO,CH4,NO,HC1に関しては,主要な同位体分子以外に,微量な同位体を含む分子のカラム濃度の測定が可能であることを明らかにした。さらに,測定対象分子と吸収線波長のリストを作成した。本研究の成果は,次世代の衛星を利用した大気微量分子の光学的遠隔計測システムの開発に生かされるものと思われる。
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