Research Abstract |
本研究では、乱流性血流雑音検出による冠動脈狭窄の早期発見を目的とし、血流雑音検出用音響変換器の研究開発、生体音響変換器用校正装置の研究開発および冠動脈狭窄検出の臨床試験の3項目を実施した。以下、それぞれについて得られた知見をまとめる。 1,音響変換器の研究開発:筆者らは先に脳血管異常検出用にPVDFフィルムを用いたタイプおよびエレクトレットを用いた液体伝導型のセンサを開発しているが、冠動脈狭窄の場合、さらに高感度,広いダイナミックレンジ,高いS/Nが要求される。そこで従来のセンサをもとに、数種類の改良型センサを試作し、後述の校正装置および臨床試験にて評価した。その結果、PVDFによる改良型センサが、液体伝導型センサに比べて感度は若干劣るものの、従来問題であった耐外来雑音特性に優れていることが明らかとなった。 2,生体音響変換器用校正装置の研究開発:試作センサの実用的な評価のため、カップリングに水を用いた校正装置の試作を試みた。生体表面の機械的特性の近似度に関して今後検討改良の余地はあるが、通常の空気カップリングでは校正が困難である構造の生体音響変換器を含めて評価が可能となった。 3,臨床試験:試作した音響変換器により、臨床測定を数例実施した。結果的に冠動脈狭窄血流雑音の検出には至っていないが、従来型に比べはるかにS/Nの良い測定には成功した。冠動脈の場合、乱流雑音に比べて心音、心雑音のレベルが高いことが主な原因である。今後の実用化のためには、特に時間領域、周波数領域においてこれらの信号を分離検出するためのアナログおよびデジタルの信号処理系の研究が必要である。
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