Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究ではセメントの水和反応に伴う,コンクリートの自己収縮に関する力学モデルの構築を試みた.自己収縮の主たる原因は,セメントペーストの固体部分の純粋な体積減少よりもむしろ,水和による自己乾燥の結果生じる構造変化であるということが最近の研究により指摘されている.この知見に則り,水和に伴う細孔組織構造の形成,および水分の状態変化に伴う固体壁間距離の収縮をモデル化し,セメントペーストの自己収縮過程の数値シミュレーションを行なった. 細孔組織構造は壁間距離の分布密度を表す関数により表現し,水和反応の進行に伴い既存の空間が微小な空間に順次分割されるとした.また反応に消費される水を考慮し,反応の進行に応じて水分を減少させた.水分と固体壁間に発生する力を毛細管力として表現し,この力と組織の平均剛性とから自己収縮を評価した。組織の平均剛性は細孔組織構造の関数として与えた. 以上の仮定により水和の進行に伴うセメントペーストの自己収縮を定性的には表現できることを示した.水セメント比が小さいほど自己収縮が大きいこと,水和の進行とともに自己収縮がある値に収束することなどが表現できた. 一方,数値実験の結果,現段階の仮定では現実を十分表現できない可能性も示唆された.特にセメントペースト中の液状水分をすべて静水力学的な水と仮定した場合,きわめて大きな負圧が計算されることが明らかとなった。自己収縮に於いて重要と考えられるきわめて微小な空隙に存在する水は,もはや静水力学的な水ではなく,分子として捉えなければならないと考察した.水和生成物の表面と水分子の間に作用する力を考えることにより,より合理的な説明ができると考えている.しかし研究期間内では,分子レベルの力学によりモデルを再構築するには至らなかった.
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