Research Abstract |
貯水池が造られると,本川以外にも支川沿いの谷が水没し,その結果多くの入り江が形成される.これらの入り江は水深が浅く,日光が底まで達する.また,貯水池本体との熱容量の違いや,風の影響が少なく混合が弱いことから,入り江は貯水池本体と異なる挙動を示すと考えられる. そこで本研究では,貯水池本体と入り江が持つ水質状態・成層状態及び両者の間の流れ特性の違いを知るために,夏季の受熱期間において,宮城県七ケ宿貯水池で現地観測を行った.まず,電磁流速計を入り江のほぼ中央,水表面近くに設置し,風向・風速との応答を調べた.また同時に水温の成層状態の違いを,水質計による多地点観測による水温の鉛直分布をもとに調べた.この結果,入り江内部と貯水池本体との間の日躍層の成層状態には,あまり差が認められなかった.また,この観測期間中,ADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)により貯水池本体と入り江を含む面内での流速分布を得ることができた.この時,風の向きは主に貯水池の形状に対して主軸方向が卓越し,午前から午後にかけて風速の変化が認められた.さらに,成層を含む一次躍層面よりも上では,貯水池本体と入り江の間に循環流が生じていた.また,一次躍層面よりも下側では,入り江から貯水池本体部分へ向かう流れが支配的であるように見えた.つまり,実質的な物質の移動は躍層面上部ではあまりなく,むしろ下層での流れにより支配されていることが予想された. この流れを再現するため,k-εモデルを構築し,理想化された形状について,入り江と貯水池本体に生じる流れを検討した.その結果,貯水池本体と入り江に異なる風応力を与えた場合,入り江において弱い水平循環流が生じることが再現できた.また,貯水池本体の躍層の静振(セイシュ)が入り江内部へ及ぼす影響は,入り江の接続位置及び湖口形状により変化することがわかった.
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