Research Abstract |
本研究では,高アルカリ条件における都市ゴミ焼却飛灰からの有害成分の溶出挙動を把握するために,試験中の溶媒のpHを一定に制御したバッチ式溶出試験を行った.また,試験結果を理論面から説明すべく,各種イオンが共存する状態での元素の存在形態に関する化学平衡計算を行い,バッチ式溶出試験による結果とあわせてpHの影響を考察した. 実施したバッチ式溶出試験は,酢酸あるいは水酸化ナトリウムで試験中の溶媒のpHを一定に維持した方法であり,溶媒のpHを4〜13まで10段階に設定した.また,溶媒と試料との比率は100ml/g,溶出時間は6時間とした.試験後,溶出液中のCr, Mn, Fe, Ni, Cu, Zn, Cd, Pd濃度を測定した.試料には2種類の都市ゴミ焼却飛灰を用いた.また,化学平衡計算プログラムによる計算では,試料中の各成分がすべて溶媒中に溶け出したと仮定し,錯体を含む各成分の溶液中における存在形態を計算した. 溶出試験の結果,pHが高くなるにつれて各成分のイオン濃度が減少する傾向がみられ,アルカリ側では非常に低くなった。化学平衡計算の結果から,溶媒がアルカリ性になると各成分が主として水酸化物として沈殿を形成するため,溶解成分の濃度が減少することがわかった.だた,Fe, Zn, Pbの場合,アルカリ側で再び濃度が高くなり,計算結果でもその傾向が再現できた.これらの元素の場合,溶媒のpHが高くなると水酸化物として沈殿していたものが再び錯イオンとして溶解するためであることがわかった.しかし,今回の試料では,溶媒のpHが4の場合の溶出濃度が最も高くなった. 本研究では,化学平衡計算プログラムによって溶出試験後の溶液中の各成分濃度とpHとの関係をおおまかに把握することができた.しかし2種類の試料のみによる結果であり,試料数を増やして再確認する必要があると考えられる.
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