Research Abstract |
既存不適確建築物の耐震性向上は,緊急を要する社会問題であり,その施策の第1段階として,まず,建物(構造システム)の安全性を定量的に評価する必要がある。システムが,その供用期間中に安全を損なう確率(限界状態超過確率)を評価するには,システムの性能にかかわる基本確率変数Xiの結合確率密度関数を機能損失空間において多重積分することにより求められる。しかし,基本確率変数が非正規変数を含む場合は,一般的には多重確率積分は解析的には不可能であり,数値積分も困難となる。モンテカルロ法は汎用的な数値確率計算法であるが,一般的な構造システムの信頼性評価手法には,多大な計算コストがかかる。 本研究では,統計的に独立な非正規多変数の和については,離散高速フーリエ変換法による確率解析法を適用することにより,効率良くかつ精確に評価することができることに着目し,構造システムの機能損失空間と機能維持空間の境界である限界状態面を,独立な確率変数の和で表わされる超平面で近似する手法とその妥当性と適用性について考察を行った。 限界状態面は,まず,基本確率変数の2次関数で表わされる曲面で近似され,続いて,各基本確率変数の1次項と2次項の和を新たな確率変数Yiに置き換えることにより,基本確率変数の2次関数を独立な確率変数の線形和として表わされる。この変換により,確率変数Yiの確率密度関数は,必ずしも滑らかな関数とはならないが,確率密度関数の離散化の際に,適切な刻み幅を設定することにより,離散高速フーリエ変換法による確率解析法は十分適用可能であることを示した。 限界状態面の適切な近似法として,本研究では,真の限界状態面と近似限界状態面との誤差を最小とする手法を提案し,既存の手法と比べ,誤差のばらつきが小さいことを示した。誤差の評価点およびその重みの設定法について,今後はさらに検討を加える必要がある。
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