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¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
各種薄膜の特徴ある物性を支配すると考えられるのと同程度、あるいはそれ以下の厚さ領域における薄膜の原子構造に関する情報を得ることは、新機能性素材を開発する上で工業的に重要であり,また、バルクとは異なる物質表面近傍および界面における特性発現のメカニズムを解明する上で基礎科学的にも切望されている。未知の物質表面近傍の構造解析を行うには物質構成元素の絶対量(原子数密度)を知る必要がある。物質表面近傍の組成についてはSIMS, XPS等の表面分析手法により比較的容易に決定できるが,密度はバルク材料に用いる手法の表面への応用は事実上不可能であり,実験的に求めることは極めて困難な状況にある。この研究上の支障を打破する手段として,X線異常散乱と全反射現象を組み合わせた斜入射X線異常反射法(Anomalous Grazing X-ray Reflectometry : AGXR)を開発し,その解析法を確立した。入射X線のエネルギーが物質を構成する元素の吸収端に近い場合,異常分散効果によって原子のX線に対する前方への散乱能が減少し,その結果、全反射臨界散乱ベクトルは小さくなる。その変化量は異常散乱を起こしている原子数に依存する。この異常分散効果が顕著となる吸収端近傍での全反射臨界散乱ベクトルの大きな変化を利用する手法が、AGXR法である。応用例として、ステンレス鋼表面上に薄く形成しているクロム酸化膜について,CrK吸収端およびFeK吸収端近傍の入射X線を用いて斜入射X線異常反射率を測定した。解析の結果得られたステンレス鋼表面酸化膜中のCrとFe原子の数密度値はAuger電子分光法で得られた結果と矛盾しないことが確認された。AGXR法は,臨界散乱ベクトルの差を計算する過程で角度の誤差が相殺されるので,角度の絶対値の厳密な決定が必要でないことが利点であり,また、結晶・非結晶を問わず種々の物質に対して適用可能であることが分かった。
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