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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
共役エンイン化合物の反応性に関する研究は、そのシンプルな構造にもかかわらず比較的少なく、ヒドロシリル化、ヒドロホウ素化、ヒドロホルミル化等の触媒反応に関する報告がいくつかあるのみであった。特に、共役エンインの構造の違い、特に二重結合のシス、トランス幾何構造の違いによる反応性の差を明らかにした研究はこれまでなかった。 私は、以前の研究で、合成容易なシス-およびトランス-1,4-トリメチルシリル二置換共役エンイン(1)とRuHCl(CO)(PPh_3)_3との化学量論的な反応において、エンインの二重結合のシス、トランスの違いによりRu-H結合の付加の位置が著しく変化する現象を見出していた。本研究では、この顕著な官能基選択性を触媒反応に応用するため、1を基質とする触媒的ヒドロシリル化反応を種々の触媒を用いて検討した。その結果、白金触媒(H_2PtCl_6)、およびロジウム触媒(PhH(CO)(PPh_3)_3)を用いた系で、cis-1とtrans-1への付加の形態が大きく変化することを発見した。すなわち、H_2PtCl_6触媒系ではcis-1への1,4付加とtrans-1への1,2付加の違いが観測された。またRhH(CO)(PPh_3)_3触媒系では、三重結合への1,2付加の形態が異なり、trans-1にはシン付加が、cis-1にはアンチ付加が進行することを見出した。これらの反応により、有機合成上有用なアレニルシランとジエニルシランを合計4種類作り分けることに成功した。これはエンインの幾何構造の違いを用いて触媒反応の選択性をコントロールした初めての例である。 また、ルテニウム錯体(RuHCl(CO)(PPh_3)_3)を用いた触媒反応では、cis-1,trans-1共に1,4-付加が進行してアレニルシランが生成したが、この反応系中にルテニウム-シリル体錯体(RuCl(SiR_3)(CO)(PPh_3)_2)が生成し、活性種となっていることを錯体化学的手法により証明した。
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