Research Abstract |
アルギン酸(Alg)やペクチン(Pec)等の天然ポリウロン酸,あるいはその誘導体を一成分として,塩基性のポリ(2-ビニルピリジン)(P2VP)やキトサン(Cts),合成ポリペプチドの一つであるポリ(L-リジン)(PL)との高分子コンプレックスをそれぞれ単独体溶液の混合により調製した.これらの試料について,沈殿物が得られた場合は,固体^<13>C NMRやFT-IRを用いて,又,溶液状態の場合は円偏光2色性(CD)測定により,コンプレックスの分子構造を検討した。 PLをカチオン成分とする場合は,溶液混合してもコンプレックスは沈殿しない.しかし円偏光二色性(CD)スペクトルから,PLがランダムコイル状態にある中性領域でも,AlgとPecの何れを添加しても,PLがα-ヘリックスに転移することが見い出された.同様の転移挙動は,ポリウロン酸の代わりに,同じく側鎖にカルボキシル基を有するポリアクリル酸(PAA)を添加した場合にも見られた.従って,ポリアニオンによる鎖に沿った協働的なPL側鎖アミノ基の荷電の中和が,コンプレックス形成とそれに伴うランダムコイル-α-ヘリックス転移に必要であることが判った. 他のポリカチオンを一成分とする場合は,コンプレックスは何れも固体沈殿物として得られた.固体^<13>C CP/MASNMRにより,ポリカチオンとポリアニオンの組成比を求めた結果,比較的剛直なポリカチオンとコンプレックス形成した場合は,仕込みの組成比やpHによらず,得られたコンプレックスは一定の組成・構造を持つのに対して,柔軟なポリカチオンとのコンプレックスでは,仕込み条件に依存して,得られたコンプレックスの組成や構造は変化した.従って,鎖の剛直性は,コンプレックスの構造を決める大きな要因であることが分かった.更に,回転系における^1Hスピン-格子緩和時間T_<1t>^Hを測定し,分子鎖レベルでの混合状態について検討した.又,AlgやPecのフィルムを,ポリカチオン溶液に含浸させコンプレックスフィルムを作製し,水中膨潤挙動を肉眼観察した.
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