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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
脊椎動物の細胞内では,能動輸送などによってCa^<2+>は10^<-7>M程度と非常に低い濃度に抑えられている.細胞外からの刺激が細胞膜に存在するタンパク質などの高分子に到達すると,何らかの経路を経て細胞内のCa^<2+>濃度が上昇して種々の生体反応が引き起こされる.このように,Ca^<2+>は細胞におけるセカンドメッセンジャーとして注目されている.一方,動物の死後,細胞内で様々な生化学的変化がCa^<2+>依存的に生じることが知られている.したがって,細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を抑制することが魚肉の鮮度保持につながると考え,本研究では死後の魚類筋肉細胞中で起こる生化学的変化と細胞内Ca^<2+>濃度との関係を明らかにした.(1)即殺したコイの背側普通筋から筋細胞束(50本程度)を細胞膜を傷つけないように採取した.この筋細胞標本にCa^<2+>イオノファアであるカルシマイシン(A23187),シクロピアゾン酸およびタプシガルジンなどのCa^<2+>能動輸送の特異的阻害剤やカフェインなどのCa^<2+>チャンネルに対する特異的アゴニストを添加したリゲル液を投与し,20℃にインキュベートした.その結果,上記いずれの薬物によっても細胞内Ca^<2+>濃度が上昇し,中でも5mMカフェインの投与の効果が元も顕著であった.これらのことからコイ筋細胞の場合筋小胞体によるCa^<2+>取り込み速度はかなり低いが,そのCa^<2+>集積量は非常に大きく,筋小胞体からの放出量は細胞外のCa^<2+>流入によるものに匹敵するものと推定された.(2)筋細胞標本を,最も効果の高かった5mMカフェインを加えたリンゲル液に浸し,ATPおよびその関連化合物の含量を高速液体クロマトグラフィーで測定したところ,ATPは速やかに減少して10分後にはほぼ完全に消失した.一方,通常のリンゲル液中ではほとんど減少しなかった.標本をSDS-PAGEに付したところ,カフェイン投与後1時間で低分子量成分が増えはじめ,その後も増加した.このことから細胞内Ca^<2+>濃度の上昇がタンパク質の分解を促進したとも考えられる.なお,増加した成分の由来およびカフェインによるリン脂質加水分解への影響については現在検討中である. 以上の結果から,細胞内Ca^<2+>濃度の上昇がコイ普通筋細胞の一部の代謝を活性化するものと考えられた.また,細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を抑制するためには,細胞膜の崩壊をできるだけ遅延することおよび筋小胞体の機能をできるだけ維持することなどが効果的であることが明らかとなった.
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