Research Abstract |
1.肝内結石症におけるムチンコア蛋白の発現プロフィール 肝内結石症36例,対照肝として閉塞性黄疸肝25例,正常剖検肝23例のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い,免疫組織学的に大型胆管上皮(デイスプラジアを除く)と胆管付属腺におけるMUC1,MUC,MUC3,MUC5,MUC6ムチンコア蛋白発現を検討した.結果として,対照肝の胆管上皮にはMUC3,胆管付属腺にはMUC6ムチンコア蛋白が生理的に発現していた.肝内結石症では対照肝と発現プロフィールが異なり,胆管上皮でのMUC5,MUC2ムチンコア蛋白の発現が高率であった.胃型のMUC5と大腸型のMUC2ムチンコア蛋白にはゲル形成能があり,この様な性質のムチンコア蛋白が新たに出現することが肝内結石症の発生,進展に深く関与すると考えられた。肝内結石症10例,対照肝1例を用い,In situ hybriidization法でmRNA発現の検出を試みたところ,MUC2,MUC6mRNAは,蛋白レベルとほぼ同様の発現動態を示した.MUC3,MUC5mRNAについては現在検討中である. 2.肝内結石症にみられる前癌性異型上皮(デイスプラジア)と肝内胆管癌におけるムチンコア蛋白の発現 肝内胆管癌合併内結石症14例,デイスプラジア合併肝内結石症11例,通常の肝内胆管癌30例(肝門型19例,末梢型11例),混合型肝癌6例で,免疫組織学的にMUC1,MUC,MUC3,MUC5/6ムチンコア蛋白発現を検討した.その結果,1)胆管上皮デイスプラジアでは,MUC5/6ムチンコア蛋白発現が高率にみられること,2)肝内胆管癌においても,MUC5/6ムチンコア蛋白発現が高率であること,3)肝内結石症合併例を含めた肝門型肝内胆管癌ではMUC3ムチンコア蛋白発現が高率であるのに対し,末梢型肝内胆管癌や混合型肝癌では殆どMUC3発現が見られないことがあきらかとなった.
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