Research Abstract |
ヒト胎児性癌細胞(EC細胞)はレチノイン酸(RA)により多彩な細胞分化を遂げ、かつapoptosisが誘導される.これらEC細胞(G3細胞,NT2細胞)では,RAによる分化誘導の際,未分化な状態ではストレス蛋白であるHSP90の極めて高い発現がみられ、分化誘導後その発現は急激に減少する。またEC細胞へのHSP90遺伝子導入はRAによる細胞分化を抑制する。我々はEC細胞の分化・apoptosisにおけるHSP90の機能を解析する目的で,その会合する分子の同定をおこなった.HSP90の標的分子として,cdc2,c-srcに着目し,EC細胞の分化誘導前後でWestern bolt法,免疫沈降法によりHSP90とedc2,c-srcの発現・会合を解析したところ,未分化なEC細胞ではHSP90とともにcdc2,c-srcの共沈がみられ,RA処理後48時間以内にそれらの会合は解離することが明らかとなった.その際,RA処理前後でcdc2,c-src蛋白の発現量に変化はなかった。この時のcdc2,c-srcとのkinase活性をin vitro kinase assayにより検討したところcdc2,c-srcとも未分化な状態でそのkinase活性が高く,RA処理後48時間以内に急速に低下が見られた.このことからHSP90は,cdc,c-srcといった細胞周期に関連する分子と相互作用をおこない。これらを機能的に制御していることを示唆している.さらにこれらのHSP90の機能を詳細に解析するため,PCRを用いた点突然変異導入により,HSP90 dominant negative変異体の作成を試みた.in vivoでの変異体をその発現確認をも容易にするため,gree fluorescent protein (GFP)との融合発現ベクターに挿入した.現在,この変異遺伝子をヒトEC細胞ならびにNIH3T3細胞,COS細胞といった体細胞に遺伝子導入し,主にその細胞周期の点からそのdominant negative分子としての機能を解析している.
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