Research Abstract |
我々は,外来抗原である陽性荷電化卵白アルブミンを腎尿細管基底膜とボウマン嚢基底膜へ選択的に結合させる実験モデルを応用し,尿細管基底膜腎炎惹起抗原に依存せず,かつ糸球体病変を伴わない実験的間質性腎炎の作製方法について検討を行ってきた. これまでにWistarラットを用いて,液性免疫導入によるin situ型免疫複合体形成性間質性腎炎の作製を試みた.すなわち,ラットの左腎動脈を経由して左腎を陽性荷電化卵白アルブミン抗原(分子量42kDa,等電点10以上,単量体)を300μg/200μLの容量で灌流し,その7時間後,ウサギ由来の抗卵白アルブミンIgG(3mg/head)を同様な方法にて投与して,尿細管基底膜局所に免疫複合体が存在する状態を誘導した.その後,経時的に投与された抗原および抗体の局在と腎組織の変化を観察した.しかし,この方法では有意な間質性腎炎は発生しなかった.その原因として,経腎動脈的に投与された抗体がpost glomerular flowに流入するが,更に尿細管周囲毛細血管基底膜を越えて,尿細管基底膜上に結合した抗原に到達しなかったためと考えられた. そこで,細胞性免疫の機序を介する間質性腎炎の誘導を試みた.WKYラットを用い,これにメチル化卵白アルブミン100μg/headをFreund完全アジュバントと共に足底部に注射して細胞性優位の免疫を獲得させた.能動免疫の6日後,上述の方法にて尿細管基底膜上へ陽性荷電化卵白アルブミン抗原を定着させた.その結果,抗原投与の24時間後には腎間質へリンパ球主体の炎症細胞浸潤が認められ,間質性腎炎の誘導に成功した.現在,間質への浸潤リンパ球のサブセット,尿細管上皮のMHC抗原(RT1B)発現について経時的に検討中である.
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