Research Abstract |
発癌感受性には個人差があることをふまえ、特に喫煙者の中に発癌高感受性者を見つけだし、禁煙活動の啓蒙をする目的で研究を行った。同一年齢層の健常者48名を対象として、P450ファミリーの1つであるCYP1A1遺伝子多型(A,B,C型)をPCR法を用いて判定し、小核発生頻度を小核試験を用いて測定し、同時に対象者の喫煙の有無を調査した。 CYP1A1遺伝子のA,B,C型の割合はそれぞれ41.7%(20人)、47.9%(23人)、10.4%(5人)であった。CYP1A1は代表的な化学発癌物質であり喫煙中に含まれるベンゾピレンの代謝に関係し、その遺伝子型のC型の人は肺癌に対する感受性が高いこともすでに報告されている。A,B,C型の小核頻度の平均値はそれぞれ3.01、2.61、3.82であり、C型の人は小核頻度が高い傾向にあることがわかった。小核発生頻度が高いことは、染色体の障害を受ける感受性が強いことを示している。対象者のうち喫煙者は6人(12.5%)であり、A,B,C型にそれぞれ4、1、1人であった。 喫煙に対する発癌感受性が高い人たちは、CYP1A1遺伝子がC型であり、小核発生頻度が高いことが考えられる。喫煙に対する発癌感受性の高い人の数は、対象者48人のうち5人である。5人のうち実際に喫煙習慣がある者は1人であり、上記の結果を踏まえた上で禁煙を進めると禁煙の効果が高いと考えられる。また、喫煙に対する感受性が高いが現在喫煙をしていない人たちには、これからも喫煙をしない方がよいことを伝えると喫煙の防止がはかられると推測される。本研究により、喫煙に対するリスクを個人レベルで評価できることになり、より説得力のある禁煙推進活動が行うことができると考えられた。
|