Research Abstract |
本研究は、1)パーキンソン病(以下PD)患者の拡散的思考(divergent thinking)を創造性検査を用いて測定することを試み、健康中高齢者と比較する、2)PD患者の創造性と年齢、運動機能障害、日常生活活動、及び自己評価との関係を検討することを目的とした。 対象はPD患者39名(平均年齢65.10±7.19歳)、対照群は居住地域を統制した健康中高齢者(以下NC)46名(平均年齢61.98±9.27歳)であった。評価は、S-A創造性検査A版を用い、思考特性であるFluency(速さ)、Flexibility(広さ)、Originality(独自さ)、Elaboration(深さ)を点数化した。自己評価はRosenbergの自尊感情スケール、知的機能評価はMini-Mental State Examination(MMSE)及び改訂版長谷川式簡易痴呆スケール(HDS-R)、運動機能・日常生活活動の評価にはHoehn-Yahrの重症度分類、及びUnified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)を用いた。 その結果、PD群、NC群とも創造性は独自さの項目を除き年齢と負の相関が認められ、加齢に伴って低下することが示された。PD群の創造性はHoehn-Yahrの重症度による差が認められ(F(1,3)=5.07,P<.01)、stage I・IV間における差は広さ、独自さ、深さが有意であった(それぞれt=2.49,p<.05 ; t=2.51,p<.05 ; t=2.32 ; p<.05)。各stage間で年齢差が認められなかったことより、創造性は重症度に従って低下することが示された。自己評価はTotal UPDRS、及びその下位項目である自覚・精神症状、特殊症状と負の相関が認められ(それぞれr=‐.40,p<.05 ; r=‐.46,p<.01 ; r=‐.40,p<.05)、PDによる障害に伴って自己評価は低下することが示された。一方、PD群、NC群間に創造性、自己評価の有意差はなく、創造性と自己評価の相関は認められなかった。 今回の結果から、PDは創造性及び自己評価に影響を及ぼすことが推測され、今後、詳細な検討を行いたいと考えている。
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