Research Abstract |
片側性パーキンソニズム(PA)において、大脳磁気刺激による運動誘発電位(MEP)の刺激強度-反応曲線(以後MEPリクルートメント曲線)を固縮の強い側(患側)と弱い側(健側)とで比較観察し、運動障害の病態機序考察の一助とした。対象は、検査の意義に関する了解を得た片側性PA患者6名である。経頭蓋大脳磁気刺激装置はマグスティム200を用い、頭頂部に円形コイルを置いて大脳運動野の刺激を行った。刺激の強さを最大出力のパーセントで表示し、20%より開始し、100%まで5%刻みで強くしていった。記録は、短母指外転筋または小指外転筋より行い、安静時のMEPを記録した。誘発された信号はアンプを通して増幅、ADコンバータを通じてデジタル化されたものをコンピュータに保存し、解析した。評価するパラメータとしては,MEPが誘発された運動闘値、刺激強度に対するMEP振幅、面積とし、これらを患側と健側とで比較した。この結果において,片側性PA6例中5例では運動闘値は健側より患側で低下していた。しかし、刺激強度の増加に対する反応の増加の程度、すなわちMEPリクルートメント曲線の傾きは健側でむしろ高くなっていたが例が2例で認められた。過去の報告においてパーキンソン病におけるMEP闘値に関しては、正常より低いと考えられながら,正常人のばらつきが大きいために統計的に有意差が出ず,ほぼ同じとするものが多かった。本方法では左右差のある症例で行うことにより、健側と患側との比較として現した。患側での闘値低下は、患側の運動路興奮性の亢進を示唆するものと考え,これはやはりPAの病態と関連しているのと考えた。また、MEPリクルートメント曲線において健側においても立ち上がりが急な症例があり、この解釈としては,PAにおいて興奮のみが強いのでなく,抑制とのバランスの異常も考えられた。
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