Research Abstract |
8字型コイルを用いて,左右の運動野を頭皮上より磁気刺激し,短母指外転筋より記録される運動誘発電位(MEP)およびinhibitory period(IP)の閾値(誘発しうる最小刺激強度)を測定した。対象は,71名の健康成人で,58名が右利き(20名が若年者(20〜38歳),17名が中年齢者(42〜56歳),21名が高齢者(60歳以上))で,13名が左利き(19〜39歳)である。若年者では右利きの場合,右側筋記録のMEP,IP閾値が左側筋記録より有意に低かった(MEP:右55.0%,左58.5%,P<0.01,IP:右34.3%,左37.1%,P<0.05)。左利きの場合,右利きの場合と左右が逆の結果であった(MEP:右58.5%,左53.8%,P<0.005,IP:右38.8%,左36.5%,P<0.05)。右利きの中年齢者でも,MEP閾値は,右記録の方が有意に低く(右57.1%,左62.1%,P<0.01),IP閾値も右記録の方が低い傾向であった(右35.9%,左37.6%,P=0.11)。右利きの高齢者では,MEP,IP閾値は,有意な左右差はみられなかった(MEP:右61.4%,左61.4%,P>0.5,IP:右39.0%,左39.5%,P>0.5)。右利きの58名において,MEPおよびIP閾値と年齢の関連を検討すると,右記録の場合,両者とも年齢と正の相関を示したが(MEP:R=0.28,P<0.05,IP:R=0.30,P<0.05),左記録の場合,両者とも年齢とは有意な相関を示さなかった(MEP:R=0.12,P=0.3,IP:R=0.23,P=0.09)。F波の検討では,脊髄前角細胞の興奮性機能の示標となるF波出現頻度およびF/M振幅比は,すべての年齢群で,有意な左右差を認めなかった。以上の結果より,利き手は,運動系特に大脳皮質運動野の興奮性,抑制性機能に影響を及ぼすが,その影響は,若年者〜中年齢者では大きいが,高齢者では少ないと考えられた。特に加齢は利き手側の運動野機能へ及ぼす影響が大きいと考えられた。
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