Research Abstract |
心筋細胞は,生後,核分裂を伴う細胞分裂や増殖,再生をする事はないと考えられるが,胎児期には,心筋細胞も増殖する.このような心筋細胞の増殖,分化の制御が,心臓の発生の過程を経て,どのようなメカニズムで行われているかは明らかでない.そこで,発生,増殖,分化に関与する遺伝子の発現を発生の時期の違いにより比較を行い,時期特異的な遺伝子発現の検討を行った. 鶏受精卵を孵卵し,経時的に心臓を摘出,RNAを抽出した.チロシンキナーゼ,ホスファターゼに存在する,保存されたアミノ酸配列をもとにオリゴヌクレオチドを合成し,それをプライマーとしてRT-PCRにて胎児期,成熟期各々のcDNAフラグメントの集団を作成した.それらを比較するため,末端ラベルし,ホルムアミド中で熱変性,急冷し,一本鎖とした後,未変性,及び,尿素を含んだ変性条件のポリアクリルアミドゲルで分離,泳動パターンの比較を行った. チロシンキナーゼでは,胎児期にのみ認められるバンドが,また,チロシンホスファターゼでは,成熟期にのみ認められるバンドが確認された.それらのバンドを切り出し,それを鋳型として,再度,PCRを行い,その産物をサブクローニングした.得られたクローンの発現の時期特異性は,特異的プライマーを使用したRT-PCRおよびノーザンブロットによって確認した. チロシンキナーゼから得られたクローンは,レセプター型のチロシンキナーゼのEPHサブクラスに属するCEK5,CEK9と一致する配列や,人のdual-specificity kinaseと高いホモロジーを示す新しいキナーゼ配列を含んでいた.また,チロシンホスファターゼから得られたクローンは,膜貫通ドメインを有するレセプター型のチロシンホスファターゼであるPTP-λと一致した.現在,得られた新しいキナーゼの全配列を得て,その遺伝子産物の機能を検討中である.
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