Research Abstract |
新生児期の生理的胆汁欝滞の病因解明のため、母乳中の胆汁酸分析をGC-MSを用いて行った。 〈対象、方法〉母乳サンプルは生後1カ月前後のもの10検体を用いた。母乳(1ml)に内部標準norCDCAを一定量加え、100%EtOH(5ml)加え除蛋白、除乳糖を行い、Bond Elut C18を用い胆汁酸を吸着、溶出した。さらに、酵素法を用いて加水分解、脱硫酸抱合を行った後、PHP-LH20を使用し中性コレステロール除去、遊離胆汁酸の抽出を行った。これを、TMS誘導体としSelected ion monitoring(SIM)を用いて分析定量した。 〈結果〉母乳中総胆汁酸量(TBA)は1.42-3.65μmol/l(mean±SD;2.41±0.73)であった。usual bile acidsであるCA,CDCA,DCA,LCAの合計は、0.51-1.76μmol/l(0.87±0.39)でTBAの22.8-51.0%(36.07±7.87)を占めていた。fetal bile acidsであるCA-lβ-ol,CDCA-1β-ol,HCAの合計は、0.78-2.05μmol/l(1.22±0.37)でTBAの36.5-67.67%(51.26±8.17)を占めていた。 〈考察〉今回のわれわれの結果では、母乳中胆汁酸の濃度は血清中の濃度とほぼ同様であった。また、fetal bile acideの割合が多いことは、この時期の母体血清、尿中の胆汁酸分析結果(fetal bile acidsは微量)とは異なり疑問が残った。しかしながら、本研究の結果より、頻回の母乳摂取による腸肝循環の亢進、さらには母乳中胆汁酸の摂取により新生児期の生理的な高胆汁酸血症を起しているものと推測され、母乳中胆汁酸は大きな病因と考えられた。 しかし、今回は研究計画どうり実験が進まず、人工栄養児との比較がされておらず、また、母乳中に乳糖、蛋白、脂質が多量に含有されていることより回収率に疑問が残った(1カ月にもかかわらずTBAに対するfetal bile acidsの割合が多いことよりも疑われる)。そこで、今後この点についての更なる研究(検討)が必要と考える。
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