Research Abstract |
目的:エンドセリン-1(ET-1)は敗血症の際に血管内皮から分泌される.ET-1は腎血管を収縮させて糸球体濾過率(GFR)を低下させる.一方,lipopolysaccharide(LPS)をラットに投与すると腎動脈は収縮し,GFRは低下する.われわれの予備実験では,Wistar系雄性ラットにLPSを3mg/kg静注するとGFRの低下とともに血清ET-1濃度は13.9±0.9pg/mlから29.1±3.9pg/mlと上昇した.最近,ET-1の作用をブロックする目的でET-1受容体拮抗剤(ETRA)が開発されている.そこで,つぎの仮説をたてた:LPS投与はET-1分泌を促進し,これにより急性腎不全を引き起こす.そして,ETRA投与によりET-1分泌を抑制すると腎機能は改善する.この研究では,エンドトキシンによる急性腎不全でETRA投与によりGFRが改善するかをラットで調べた. 方法:Pentobarbitar腹腔内麻酔下に内頚静脈,頚動脈および膀胱内にカニュレーションした.回復期の後,クリアランステストを行ない基礎値とした.LPS処置群:LPS+ETRA群はLPSを静注後,直ちにETRA10mg/kgを静注し,2回目のクリアランステストをおこなった.ETRAの代わりに同量の生食を静注し,LPS+生食群とした.コントロール群:のLPSの代わりに同量の生食を静注した.ETRA投与前後のGFRの増加分をΔGFRとした. ΔGFR:LPS+ETRA群の-2.40±0.14ml/minはLPS+生食群の-2.47±0.31ml/minと比較すると有意差がなく,コントロール群の-0.12±0.54ml/minと比較して低下した. まとめ:LPSを投与すると血清ET-1濃度が上昇した.LPSによるGFRの低下はETRA投与により改善しなかった.
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