Research Abstract |
悪性腫瘍による気管狭窄や先天性気管狭窄など,今まで治療不可能であった症例が気管のホモグラフトにより治療可能となりうると考えられ,より多くの呼吸困難で苦しむ患者を治療できるようになると推測される.気管のホモグラフト,特に凍結保存気管に向けて,実験を行った. 我々は凍結保存同種気管移植において移植気管の粘膜上皮,気管軟骨が生着していることを報告してきたが,それらの起源がドナー由来なのかレシピエント由来なのか未だ不明である.そこで凍結による組織抗原性の変化の解明のために,主要組織適合抗原(MHC)による純系が確立しそれらに対する抗体が入手しうるラットを用いて凍結同種気管移植を行い,移植気管のMHC抗原の変化を検討した。 ラットはPVGラット(RT1Ac抗体)をドナーにACIラット(RT1Aa抗体)をレシピエントに用い、頸部気管をドナーより5軟骨輪部を切除しグラフトとした。このグラフトを我々が用いているプロトコールに従いプログラムフリーザ-にて凍結し、約1〜2カ月間保存後に解凍しレシピエントの同部位の気管にインターポジションにて移植した。コントロールとして凍結保存をせず同様に移植を行った。移植後約2カ月後に移植気管を取り出し以下の検討を加えた。 1)移植気管を摘出し、MHC class Iに対するモノクローナル抗体を用い免疫組織染色を行った。 2)同時に移植気管を組織学的にその形態を比較し、粘膜上皮の変化からその動態を検討した。 【結果】凍結保存気管移植では取り出した移植気管は組織的に粘膜上皮、気管軟骨の形態は保たれていた。そして移植気管の粘膜上皮はレシピエントであるACIラットに対するRT1^2抗体で染色され、気管軟骨周囲組織はドナーであるPVGラットに対するRT1^c抗体で染色された。すなわち凍結保存気管移植では移植気管の粘膜上皮はレシピエント由来、気管軟骨はドナー由来という結果が得られた。
|