Research Abstract |
本年度の研究では,関節固定後のラットのアキレス腱部に超音波照射を行い,腱組織コラーゲン線維の可溶性を測定し,関節固定後の超音波療法が腱組織コラーゲン線維にどの様な影響を及ぼしているのか検討することを目的として実験を行った.実験動物として,8週齢のウイスター系雄ラット12匹を用いた.ラットの片側足関節を7週間ギプスにて固定後,固定側のアキレス腱部に1日10分,週5回,2週間超音波照射を行いこれを照射群(n=6)とした.対照群(n=6)は固定終了後,2週間自由に飼育した.その後,照射群と対照群のアキレス腱を摘出し可溶性変化の分析を行った.超音波照射装置は日本メディックス社製・インタートロン6100を用いた. その結果 1.塩可溶性コラーゲン量:全コラーゲンに対する塩可溶性コラーゲンの割合は,対照群と照射群間において有意差を認めなかった(p>0.05). 2.酸可溶性コラーゲン量:全コラーゲンに対する酸可溶性コラーゲンの割合は,対照群に比較し照射群が有意に増加した(p<0.05). 3.不溶性コラーゲン量:全コラーゲンに対する不溶性コラーゲンの割合は,対照群に比較し照射群が有意に減少した(p<0.05). 4.不溶性コラーゲンのペプシン可溶化率:不溶性コラーゲンをペプシン処理し,可溶化したコラーゲンの割合は,対照群と照射群間において有意差を認めなかった(p>0.05). 以上の可溶性の変化に関する結果から,関節固定後の超音波照射により腱組織コラーゲンの可溶性は変化する可能性が示唆された.また,超音波照射により酸可溶性コラーゲンの増加と不溶性コラーゲンの減少を認め,このことはコラーゲン分子に形成される架橋結合に関しても影響を及ぼしていることが推察され,その変化は構成する組織の柔軟性を増加させる方向へ移行していると考えられる.
|