Research Abstract |
経食道ドプラ心エコー法(TEE)による肺動脈圧の指標に対する心膜切開と体外循環の及ぼす影響を検討した.年齢43から70歳の心臓外科手術患者14例を対象とした.フェンタニールにて麻酔導入,気管内挿管後,TEEプローブ(UST-5233S-5アロカ社製)を挿入した.パルスドプラのサンプル部位を肺動脈主幹部中央に置き肺動脈血流波形(PAF)を呼吸停止下に記録した.測定は,体外循環前後の血行動態の異なる73ポイントにおいて行い,同時に肺動脈カテーテルにより収縮期肺動脈圧(sPAP),Log sPAP,平均肺動脈圧(mPAP),Log mPAPを求めた.測定項目は心電図のQ波から肺動脈血流の立ち上がりまでの前駆出時間(PEP),立ち上がりから最大速度までの加速時間(AT),右室駆出時間(RVET),R-R間隔(RR)であり,肺動脈圧の指標とされるこれらの比,PEP/AT,PEP/RVET,AT/RVET,PEP/√RR,AT/√RRの5項目を算出した. 統計学的検討は,胸骨切開前(I群),心膜切開後(II群)、体外循環後(III群),胸骨閉鎖後(IV群)に分類し肺動脈圧とPAFの各指標との間でsimple linear regressionにより行った.結果を以下に記述する. I群:各指標は全ての肺動脈圧に対して有意な相関を認めた.PEP/ATがsPAP(R=0.745),Log sPAP(R=0.735),mPAP(R=0.78),Log mPAP(R=0.754)について最も高い相関を示した. II群:各指標とも有意な相関を認めなかった.III群:各指標とも有意な相関を認めなかった. IV群:PEP/√RRとAT/√RRはsPAP,Log sPAP,mPAP,Log mPAPとそれぞれ有意な相関を示したが,I群で最も良い相関を認めたPEP/ATなど他の指標は相関しなかった. 以上より術中TEEを用いて非観血的な肺動脈圧の評価が可能であるが,心膜切開や体外循環の影響を受ける.
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