Research Abstract |
Pyrimidine Nucleoside Phosphorylase (PyNPase)は、チミジンホスホリラーゼ(TdRPase)とウリジンホスホリラーゼ(UdRPase)の総称であり、ヒトにおいてはTdRPaseが、ラットやマウスなどの齧歯類においてはUdRPaseが分布している。教室においても、preliminary studyとしてinformed consentの得られた膀胱癌症例の腫瘍組織と正常組織のPyNPase値を測定し、腫瘍組織内活性が高いことを確認した。そこで、ラットならびにマウスを用いて、N-butyl-N- (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN)投与により発生する膀胱腫瘍および正常膀胱の組織中PyNPase値を測定し、臨床例における測定結果と比較検討した。実験方法は、0.05%BBNを投与するラット膀胱発癌実験モデルを用いて、経時的に屠殺した後、膀胱のPyNPase値を測定した。動物は、F344雄性ラット130匹を用い、第1群: 0.05%BBN 8週投与群で、屠殺は4, 8, 12, 16, 20週、第2群: 0.05%BBN 12週投与群で、屠殺は12, 16, 20週、3群: BBN非投与の対照群で、屠殺は4,8,12,16,20週の3群に分けた。第1および2群は実験途中に各10匹、最終の20週のみ各20匹の屠殺を行い、第3群は全期間を通じて各6匹ずつ屠殺を行った。各群とも半数はPyNPase測定用に、半数は病理組織の検索用に供し、PyNPase値はELISA法にて測定した。その結果、膀胱のPyNPase値は第1群で経時的に24.4, 28.1, 42.0, 28.9, 38.3、第2群で24.4, 28.1, 50.8, 27.5, 33.4、第3群で25.7, 30.6, 30.3, 19.5, 31.9 (μ gFU/mg protein/hr)を呈した。病理組織学的結果は、従来の結果と同じく経時的にsimple hyperplasia, nodulopapillary hyperplasiaを経て、20週時には全例においてcarcinomaの発生がみられた。PyNPase値の経時的変動に一定の傾向はみられなかったが、BBN非投与の正常膀胱ラット群で平均28.1、一方、担癌ラット群で平均36.1を示したことより両群間に有意差がみられた(p<0.001)。目下、マウスにおいても同様の検討を実施中である。
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