Research Abstract |
歯槽骨吸収の理由については未だ詳細にされていない.われわれのグループは,ラット臼歯の抜歯後,約1年までの長期にわたる歯周組織の変化を従来の光学顕微鏡と新しい手技によるLSMを用いて観察した.生後5週齢のSprague-Dawley系ラットの下顎左側第一臼歯をジエチルエーテル吸入麻酔下で抜歯し,右側は無処置対照とした.抜歯直後,3日後,1,2,4,7,12,24および48週後に10%中性緩衝ホルマリンにて潅流固定を行い,下顎骨を摘出し,通法により,脱灰パラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を施して検鏡した.また,富永の方法(1995)により作製したカルセインラベリング研磨標本をLSM(GB200・オリンパス)で観察した.なお,比較のため,抜歯7週および48週後の対照側に対しては通法に従い,コンタクトマイクロラジオグラフィー(CMR)を行った.対照側の所見は,歯周組織における加齡変化に合致した.すなわち,ラット臼歯部歯周組織の加齡変化について,1944年以来SicherらやBeltingらにより,Distal DriftおよびMesial Tippingといった諸説が唱えられてきた.その後両説をまとめた上野ら(日歯周誌15:238-47,1973)の報告と合致した.実験側においては,海綿骨の骨梁が経週的に減少し続けるわけではなく,環境に合ったように骨改造が行われれば,それとともに骨梁が増加することが考えられた.なお,抜歯側の治癒はHE所見では抜歯後4週目であるが,LSMによると7週目であった.これは,本実験で観察した標本の厚さがCMR,HEおよびLSMでは,それぞれ約60,5および0.1μmであることが原因であると考察する.以上から,ラットにおいては困難とされていた骨梁形態の変化がLSMにより十分に観察できることが示唆された.
|