Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
頭頚部悪性腫瘍に対する放射線治療の副作用として唾液腺障害や下顎骨骨壊死等はしばしば注目されるが,中等度以上の太さを有する血管への影響に関する臨床的検討はほとんど行われていない。そこで,口腔領域に悪性腫瘍(扁平上皮癌)を有し放射線治療を受けた症例を対象に,超音波ドプラ法を用いて頚動脈に対する放射線障害の有無に関する検討を行った。対象とした症例数は19例,年齢は59歳から85歳(平均71歳),腫瘍の発生部位別では下顎歯肉癌5例,口底癌4例,頬粘膜癌4例,舌癌5例,口腔咽頭部癌1例であった。原発巣に対する照射線量は30から75Gyであった。測定は照射直前および照射後1から9か月後に行い,総頚動脈の血流の最高速と最低速の比,動脈分岐部の血管腔閉塞率を計測した。過去の検討では照射後の急速な血栓形成が報告されているが,本研究では照射後の著明な血栓形成は観察されなかった。それとは対称的に血管閉塞率は34%から26%に減少し血流量は631ml/minから66ml/minに増加,血流速比は4.1から3.8に減少した。 本研究結果より,放射線照射後には頚動脈の血管抵抗が低下し血流量が増加すること,すなわち放射線照射は頚部血流動態に対して良好に作用する可能性が考えられた。症例数は少なく断定は困難であるが,時には致死的である頚部血管血流障害の改善に対する放射線照射の有効性を示唆する非常に有意義な結果が得られた。今後,症例数を増加させて検討を深めていく予定である。
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