Research Abstract |
テトラサイクリン耐性遺伝子tetを有する細菌の,歯周疾患患者の歯周ポケット内における存在、同菌と歯周ポケットの深さ,被験者の年齢との関連性について検索した。 被験者は歯周疾患患者38人(平均年齢55.1歳)とした。4mm以上の歯周ポケットから滅菌済みペ-パ-ポイントで細菌を採取し,ABCM-brothに入れて細菌培養検索とPCR検索に利用した。培養には,4μg/ml塩酸テトラサイクリンを添加した血液寒天倍地を使用した。サンプリング原液の希釈液を倍地に塗抹し,ガスパックにて2-5日間嫌気培養し,分離,継代,同定した。サンプリングした原液を1/10に希釈し,その溶液を遠心分離して得られたペレットよりボイル法でDNAを分離抽出し,テトラサイクリン耐性遺伝子tetMについて定性検索した。プライマー及びPCR条件は,Walker(J.Periodontol,1995;66:102-108)らの報告に準拠した。テトラサイクリン耐性菌としてActinomyces odontolyticus,Clostridium subterminale,Peptostreptococcus micros等が分離,同定され,tetMが認められた。tetMは被検者の60.5%(23/38)に陽性として検出された。サンプリング部位のポケット深度によって2群,=4mm(n=19),>4mm(n=19)に分けると陽性率はそれぞれ31.6%(6/19),89.5%(17/19)であった。また,年齢によって2群,<60歳(n=21),≧60歳(n=17)に分けるとそれぞれ,47.6%(10/21),76.5%(13/17)が陽性であった。 今回に検索から,テトラサイクリン耐性遺伝子tetMを有する細菌の歯周ポケット内の存在が実際に確認された。また,歯周ポケットの深さと,被検者の年齢が耐性菌に陽性率と関連しているかもしれないことが示唆された。当初の目的の,テトラサイクリンの投与量,投与頻度と耐性菌の分布との関連性については,他のテトラサイクリン耐性遺伝子(tetB,tetQ)とともに現在検索中である。
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