Research Abstract |
大臼歯部の遊離端欠損が長期間補綴されずに放置されているのを臨床においてしばしば目にする.しかし,大臼歯部の欠損は,顎口腔系に様々な悪影響を及ぼし,顎機能障害を惹起する要因の1つになると考えられている.本研究では大臼歯部の欠損が,下顎頭の動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 上下顎,左右側のいずれかに補綴されていない第1大臼歯から第3大臼歯の連続する欠損が存在し,片側性または両側性に大臼歯部での咬合が欠如した者で,かつ小臼歯部における咬合で咬頭嵌合位は明確に定まる者を被験者とした.最終的な被験者数は, 40歳代10名,50歳代10名,60歳代以上10名を計画しているが,現在までに各年齢層数名の運動データを計測した状況である.前方滑走運動,側方滑走運動時の下顎頭運動路の形態について分析し,既に蓄積されている正常有歯顎者の顎運動データと比較した結果,下顎頭の運動方向に正常有歯顎者と差が認められる被験者が存在した. 今後,予定数の被験者について運動測定し統計学的分析を行うとともに,両側性欠損の被験者群と片側性欠損の被験者群とのデータ比較により,欠損の範囲と下顎頭動態の変化との関係についても明らかにする必要があると考えている.
|