Research Abstract |
本研究では,象牙質接着メカニズム,特に象牙質・レジン接着界面における潜在疲労破壊,すなわち負荷荷重と残留ひずみおよび構造変化の関連性について,微小領域からの検討を行った。実験は以下の方法に従った。 (1)X線光電子分光分析法(ESCA)を用いて,切削直後の象牙質,表面処理後の象牙質表面,プライマー処理後の象牙質,ボンディング材およびコンポジットレジンの元素・化学結合の分析を行い,疲労破壊した象牙質・レジン接着界面と比較・検討を行った。 (2)象牙質・レジン接着界面への荷重の負荷および除荷が及ぼす影響について,超微小硬度計を用いて,象牙質界面の弾性率の変化および残留ひずみ量を解析した。 (3)破壊した界面について,微分干渉顕微鏡により検討した。 その結果,象牙質処理方法およびボンディング材の違いにより,負荷が加わった際に,異なる変形挙動および構造変化を生じることが示唆された。特に,破折後の象牙質・レジン接着界面について形態学的観察を行った結果,象牙質・ボンディング材の界面で破折する場合とボンディング材・コンポジットレジンの界面で破折する場合など,ボンディング材の弾性率の違いにより破折部位が異なることが明らかとなった。 以上の実験結果を有限要素法およびエシェルビーの理論をもとに,生体力学的3次元解析モデルにより検討を加えた結果,前述の実験結果は,本モデルの解析結果とよく一致しており,その有用性が示唆された。本モデルは新しい象牙質接着システムを開発する上で,有用であると考えられる。
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