Research Abstract |
本研究は擬似歯槽骨に変化を与えたシミュレーション模型を用い,当講座が義歯の支持と維持歯の保全に対して有用な機能をもつと考えている一側が維持腕,他側が拮抗腕のコンビネーション鉤とエーカース鉤を用いた2種の義歯が維持歯および義歯の挙動に対してどのような影響があるか比較検討した. 実験模型は7667欠損症例を想定したもので55の歯冠形態は2種維持装置に対応するものを用いた.また,55の咬合面中央部には金属四角柱を歯軸と一致させ植立し,測定桿とし,歯頚部から17mm上方部の変位を測定した.歯槽骨縁は歯頚部より約3mm下方とした. 実験義歯はリンガルプレート形態の鋳造床(クラスプは除く)で55部にエーカース鉤(以下A鉤),コンビネーション鉤(以下C鉤)を設置した2種義歯を用いた. 荷重は右側床の第一大臼歯歯槽頂相当部(以下中央部)とその頬舌側にそれぞれ2mmの部位(以下頬側部,舌側部)にそれぞれ最大5Kgまでの垂直荷重を加え,維持歯と義歯床の水平的変位を測定した. その結果、 1,5Kg荷重時の荷重側維持歯は中央部ではA鉤は0.10mm,C鉤は0.09mm変位した.頬側部ではA鉤は0.14mm,C鉤は0.09mm,舌側部ではA鉤は0.17mm,C鉤は0.05mm変位した.このことはC鉤がA鉤に比べ維持歯の水平的変位量が小さい. 2,5Kg荷重時の荷重側義歯床は中央部ではA鉤は0.29mm,C鉤は0.15mm変位した.頬側部ではA鉤は0.31mm,C鉤は0.17mm,舌側部ではA鉤は0.28mm,C鉤は0.11mmの変位を示し,各条件とも維持歯と同様にC鉤がA鉤に比べ義歯床の水平的変位量が小さい. 以上の測定よりコンビネーション鉤は有用であることが示された.
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