Research Abstract |
今回,われわれは顎関節内障のため顎関節円板摘出術を施行された手術症例18標本と新鮮屍体からの対象症例の10標本について,顎関節と滑膜におけるテネイシンの局在をパラフィン切片と抗ヒトモノクローナルテネイシン抗体を用い免疫組織化学的手法にて分析した. 免疫組織化学的分析結果は,28例,すべての症例において血管壁,神経周膜,関節円板最表層に限局性のテネイシンの局在が観察された.また,ビマン性の局在が,肥厚している滑膜層間質部と著しく変形した顎関節円坂内に確認された.強陽性の局在が,著しく肥厚した滑膜の最表層のみにみられた. 以上の免疫組織化学的分析結果より,炎症,増生,肥厚をともなう病的顎関節滑膜での特異的なテネイシンの局在が証明された. また,テネイシン光輪の様相を呈する細胞が確認されたことから,これらの所見は組織修復,創傷治癒に関連するテネイシンが滑膜細胞により産生されていることが推測された. さらに同標本を用いて,テネイシンの遺伝子発現を,In situ hybridizationにて分析したところ,テネイシンのmRNAが,血管壁細胞,関節円板最表層,肥厚した滑膜の滑膜細胞,繊維芽細胞に確認された.連続切片での免疫組織化学的手法による分析との対比でも両者の分布,発現に一致が見られ,顎関節内障の滑膜での滑膜細胞におけるテネイシンの産生が証明された. 近年,顎関節内障の症状と滑膜の炎症の程度には,密なる関連が存在するものと考えられている.本研究により,組織修復,創傷治癒に関連する細胞外基質のテネイシンの遺伝子発現が,顎関節内障の病理組織学的変化,とくに滑膜の病変において特異的に発現することが明らかになった.
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