Research Abstract |
口腔扁平上皮癌患者の生検・手術材料を用いて,ABC法によりp21^<CIP1/WAF1>蛋白(以降p21と略記)の発現を検索し,Le^Y抗原,PCNA,p53変異型蛋白(以降p53と略記)の発現ならびにnick-end labelingによるDNA断裂部の検索結果と比較検討を行った。p21の発現は,PCNAやp53の発現と同様に,主に癌細胞の核内に染色されて認められたが,PCNAやp53陽性細胞にはp21の発現はあまり認められず,Le^Y抗原陽性細胞に一致して,p21の発現が認められた。ただしnick-end labelingによるDNA断裂部には、p21の発現は認められなかった。次に口腔扁平上皮癌患者48例(経過良好症例30例・経過不良症例18例)を対象とし,それらの初診時生検材料でのp21の発現を検索し経過予後との関連性を検討したところ,当初の予想に反し,p21の発現が強い程,経過不良であり,経過良好・不良群間で有意差を認めた。また経過不良群の中で,p53の発現を認めず,野性型p53を有すると考えられる症例では,p21の発現増強を認めることが多く,経過良好群の中で,p53の発現を認める症例では,p21の発現増強を認めないことが多かった。さらに治療前,中,後でのp21の発現を検索すると,これも予想に反し治療効果に応じてp21の発現は減弱する所見を得ており,経過観察を行う上で一つの指標にはなり得ると考えられた。なお口腔扁平上皮癌細胞株におけるp21蛋白の発現量をWestern blottingにて検索したところ,抗癌剤処理にて増殖抑制させると,p21の発現誘導が認められ,組織切片上でのABC法による検索結果とは異なっていた。また今回検索した範囲内ではPCR-SSCP法にて,Exon2,3においてp21^<CIP1/WAF1>の変異は検出できなかった。なおパラフィンブロックからのDNAの調製には10μm程度の厚い切片が数枚必要であり,マテリアルの残量が少ないパラフィンブロックの使用は困難であった。
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