Research Abstract |
2,2'-二置換-1,1'-ビナフタレン類は軸不斉を有する化合物であり、近年、この軸不斉を利用した金属類への各種不斉配位子が合成されてきている。それらの中で、ルテニウムやロジウムなどの後周期遷移金属を対象として合成されたものは、主としてリン原子が金属への配位部位となるタイプの配位子が多く、他のものはあまり検討がなされてきていない。本研究は、後周期遷移金属を対象とした、新たなビナフチル誘導体型の不斉配位子を合成し、不斉触媒反応に応用していくことを目的とした。 上記の目的に従い、リン酸の酸素原子が金属への配位部位となる、各種リン酸ビナフチル誘導体を合成した。これらの化合物をそれぞれロジウムアセテートと配位子交換させたところ、リン酸誘導体を4個配したロジウム二重体錯体を得ることができた。まず、無置換の(R)-1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルホスフェートを配位子とした錯体を触媒として用い、3-オキソ-2-ジアゾ-6-フェニルヘキサン酸エステル類を基質とする不斉5員環形成反応を行ったところ、エステル類のアルコール側置換基の嵩高さに応じて、生成するシクロペンタノン類の不斉配置がR体からS体へと大きく変化するという、興味深い結果を得ることができた。また、(S)-1,1'-フェナンスレン-2,2'-ジイルホスフェートを配位させた錯体を触媒として同様の反応を行ったところ、最高52%eeでシクロペンタノン誘導体を得ることができた。触媒の反応部位にさらに込み入った不斉環境を作ることが予想された(R)-3,3'-ジフェニル-1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジイルホスフェートを配位子とした錯体では、触媒としての反応性が低下した。立体的に嵩高過ぎたため、基質がロジウム表面に接近するのが妨げられたためと考えられる。
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