Research Abstract |
本研究においては,trans-エンインシステムを有するプロキラルな基質に対しシャープレス不斉ジヒドロキシル化反応を適用することにより,4連続不斉中心を有するテトラオールシステムの高エナンチオならびにジアステレオ選択的な構築法の開発を行い,かつその応用として中央アフリカやマダガスカルなどで民間薬として供されている植物Tetradenia sp.より単離されたボロノライド1の合成を行った. まずSonogashira等の方法にしたがってボロノライド1合成に必要な全ての炭素単位を有する(E)-1-(tert-butyldimethylsioxy)-7-dodecen-5-yne(2)を合成した。本化合物に対してシャープレス等により開発された不斉ジヒドロキシル化反応を適用した。AD-mix-αを用いて反応を行ったところ,高エナンチオ選択的(94%ee)かつ高収率で反応が進行し(7R,8S)-1-(tert-butyldimethylisioxy)-7,8-dihydroxydodec-5-yne(3)を与えた.次いで本化合物の三重結合をLindlar還元に付しシスオレフィンとし,さらにこれに対しAD-mix-βを用いてジヒドロキシル化を行ったところ,反応はジアステレオ選択的に進行し目的とする(5R,6R,7R,8S)-1-(tert-butyldimethylsiloxy)-5,6,7,8-tetrahydroxydodecane(4)が主成績体として得られた.テトラオール4は数工程にてボロノライド1へ変換することができた.一方AD-mix-αを用いてジヒドロキシル化を行うと(5R,6R,7R,8S)-1-(tert-butyldimethylsiloxy)-5,6,7,8-tetrahydroxydodecane(5)が主成績体として得られた.また三重結合をマスクされたオレフィンと考えればトランス体へも容易に変換できることから,AD-mix-αとβを使い分けることにより任意の立体化学を有するテトラオールシステムを構築できると考えられる.したがって本法によればボロノライド1の非天然型の誘導体をも合成可能と考えられる.
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