Research Abstract |
ヒトIM-9細胞からのヒト成長ホルモン結合蛋白の放出が、ホルボールエステルの一種であるPhorbol 12,13-dibutyrate(PDBu)添加により、2-3倍に増加した。このPDBuの効果は、濃度および時間依存的であった。PDBuの効果は、添加後10分からみられること、蛋白合成阻害剤cycloheximideにより阻害されないことから、新たな蛋白合成はホルボールエステルの作用に関与していないことが示唆された。さらに、このPDBuによる成長ホルモン結合蛋白放出の促進効果は、protein kinase Cの特異的阻害剤であるRo31-8220により阻害されること、protein kinase Cの合成活性化剤である1-oleoyl-2-acetyl-glycerolによっても結合蛋白放出が促進されたことから、ホルボールエステルによる結合蛋白放出促進にprotein kinase Cが関与していることが示唆された。さらに,H-89処理によっても,結合蛋白放出促進は阻害された.IM-9細胞に存在するprotein kinase Cの分子種を調べたところ、α,δ,μ,ιの4種が検出された。この内、ホルボールエステルに反応するα,δ,μが成長ホルモン結合蛋白放出促進に関与している可能性が考えられた。 さらに、様々な蛋白質リン酸化反応を抑制することが知られているK-252aおよびK-252bも、ホルボールエステル(PDBu)による結合蛋白放出を阻害した。この中、K-252bはK-252aに比べて細胞内に容易に透過しないことから、細胞外のリン酸化反応が結合蛋白放出促進に関与していることが示唆された。^<32>P-ATPを用いた細胞外リン酸化反応の結果から、実際にPDBu刺激により細胞外の数種の蛋白のリン酸化の促進がみられること、このリン酸化がK-252bにより濃度依存的に阻害されることが明らかとなった。K-252bおよびH-89の結合蛋白放出促進効果の阻害濃度と細胞外蛋白質リン酸化阻害濃度との相関から、分子量78kdaの蛋白が結合蛋白放出に関与しているプロテアーゼである可能性が考えられた。
|