Research Abstract |
薬物間相互作用の多くは代謝部位の阻害に起因するため,他の薬物と併用される可能性の高い薬物についてはin vitroであらかじめ代謝活性への影響を知ることが相互作用発現の軽減に役立つと考えられる.本研究では、多くの薬物と相互作用を示すことが報告されているトリアゾラム(TRZ)をモデル薬物とし,その代謝動態に対するケトコナゾールおよびフルオキセチンの作用を定量的に予測するための検討を行った. ヒト肝ミクロソームを用いた検討により,TRZのα位および4位水酸化活性はケトコナゾールおよびフルオキセチンにより阻害されることが示された.酵素反応がMichaelis-Menten型の反応様式を示す場合,阻害薬による代謝阻害率は阻害薬濃度([I])と阻害定数(Ki)に依存し,[I]/([I])+Ki)として表される.ラット肝ホモジネートに薬物を添加し,遠心後の沈殿画分と上清中の薬物濃度比より求めた肝/水分配比を遊離型血漿中濃度に乗じた値を[I]とし,ヒト肝ミクロソームを用いた検討で得られたKi値から阻害率を算出した.その結果,ケトコナゾールについてはin vivoで認められるTRZのクリアランスの低下率とほぼ等しい値が得られた.一方,フルオキセチンについては,阻害率がクリアランスの低下率よりも低値を示した.フルオキセチンの主代謝物であるノルフルオキセチンもTRZの代謝活性に対して強い阻害作用を示したため,ノルフルアキセチンによる阻害についても加味したがクリアランスの低下率とは一致しなかった. 以上の結果より,ヒトの場合にはケトコナゾールの併用によるTRZのクリアランスの低下率は代謝阻害率と比較してほぼ一致することが示された.しかし,フルオキセチンについては今後,肝/水分配比以外の阻害薬濃度を補正する因子について検討する必要があると考えられた. これらの結果は,第11回日本薬物動態学会にて発表された.
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