Research Abstract |
目的:術後患者ケアに携わる看護婦が,患者の術後精神症状を他覚的かつ簡便に評価できる「日本語版 術後精神症状 評価尺度」の開発のための一段階として,実際に日本国内で使用されている福井ら(1988)のSOADスコアについて,信頼性・妥当性の検討を行なった。 対象および方法:SOADスコア記入対象患者は,1996年12月〜1997年1月と1997年9月〜12月に都内大学病院の外科病棟に入院し,気管内麻酔による手術を受けた成人患者のうち,重度の意識障害,脳神経系外科疾患および呼吸・循環器系外科疾患を除く111名(男性84名,女性27名,年齢63.1【plus-minus】11.2歳範囲 27〜88歳)であり,主な疾患の内訳は,消化器系(45%),肝・胆系(25%),脈管系(22%),その他(8%)であった。術後7日間の患者の精神症状を,S(睡眠覚醒リズムの障害),O(見当識障害),A(体動・言動の異常),D(要求・訴えの過多・過少)の4項目で各勤務帯の看護婦に評価・記入してもらった。述べ2488観察時点のSOADのデータより,項目間の相関係数,因子分析(主成分分析,回転なし),内部一貫性係数(α係数)を算出し 結果および考察:全データより欠損値を除く1793観察時点を分析した。項目間の相関係数(r)は,O-A(r=0.6139^<**>),A-D(r=0.4102^<**>),O-D(r=0.3044^<**>)が高く(^<**>p<0.01),Sと他の項目はr=0.2程度と低かった。因子分析では1因子が抽出され,累積寄与率は50.7%であった。α係数は0.5176,S項目を除外した場合は0.6609と高くなった。次に,SOADすべてが0の時点を除いた526観察時点の分析では,項目間の相関係数はほぼ同様の傾向を示したが,因子分析では2因子(S,寄与率47.5%,O・A・D,寄与率25.5%)が抽出され,累積寄与率は73.3%と高かった。α係数は0.4841で,S項目を除外すると0.6479となった。これらより,SOADスコアは精神症状を直接的に表わす項目のO・A・Dと,精神症状とは別の側面のSから構成されることが確認されたが,SOAD評価点の合計については,Sの平均点がOADそれぞれより高いため,OADは合計点に十分に反映されないことが示唆された。 今後の課題:精神症状の「前触れ」や「初期症状」として,SOADでは拾いにくい状態を評価する観察項目を検討していく必要がある。また,早期発見と看護婦の臨床利用に有用とされ,信頼性・妥当性が確立しているNeelonら(1997)の"The NEECHAM confusion scale"を参考に,日本語版尺度の開発を継続する。
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