Research Abstract |
洗浄における汚れの除去機構を考える場合,洗液中の界面活性剤や洗浄補助剤による化学的作用とともに,外部から被洗物に与えられる物理的作用も非常に重要な要因を占めている.本研究は,物理的作用の一つである洗浄液の持つ流体力に着目して検討したものである. 実験装置として,透明アクリル板を用いた流路(内径約200×20×20mm)のフランジ部分に,洗浄液を流れ方向と直角になるように布モデル(ポリエステルおよびステンレスメッシュスクリーン)を挟んだものを作製し,ヘッドタンク,微小差圧計と接続して全体を組み立てた.この装置の流路内に,イオン性の異なる界面活性剤水溶液5種と希薄高分子水溶液2種および水のせん断流を流し,メッシュ間隙を通過する際に生じる抗力を,前後の圧力差から算出した.さらに,メッシュの織り密度,流量,溶液の種類や濃度などの条件を変えてその影響を採るとともに,抗力の時間による変化を検証した. 1.すべての溶液で、流路内のレイノルズ数(Re)の増加とともにメッシュ前後の圧力差も増加し,抗力も高くなった.しかし,増加のしかたは溶液によって異なり,それぞれの特徴を示した.すなわち,水の抗力はReとともに穏やかに上昇したが,界面活性剤水溶液はそれに比べて急激な上昇傾向を示しReの影響を受けていた.また,希薄高分子水溶液は低Reでは穏やかに上昇するが,高Reになるにつれて急な上昇に転じ,さらに高Reになると再び緩やかになるという特異な傾向を示した.全体として抗力は,水>界面活性剤水溶液>希薄高分子水溶液の順となり,これは各溶液の粘度の順位と一致していた. 2.流量を一定にして抗力の時間による変化を検証した結果,低Re(10〜50程度)では実験開始直後から穏やかに圧力差が上昇し続け,10分程度で一定になった.しかし,高Re(100〜1,000)では数秒から十数秒で一定になり,その後の変化はほとんど認められなかった. 3.すべての実験条件下で,抗力は織り密度の大きい(オープニングエリアが小さい)メッシュほど高く,溶液通過が困難であることを示した. 以上の結果を実際の洗浄場面に関連させると,界面活性剤水溶液は水よりも抗力が高く布間隙を通過しにくいことから,布に付着した汚れを除去する上では汚れを運び出す作用となって働くとみなすことができ,洗浄性が高まると予想され,物理的作用においてもその有効性が示唆された.
|