Research Abstract |
本研究の目的は,運動時の筋代謝に及ぼす高炭水化物食の影響を筋の組織化学的特性の観点から検討することであった。 被検者には定期的なトレーニングを行っていない健常な男子学生4名を用いた。これらの被検者の外側広筋の筋線維組成(%FT線維)は予め筋バイオプシー法によって調べられた。被検者は5日間の高炭水化物食(炭水化物;70.4%,タンパク質;14,3%,脂肪;15.3%)前後の2回,超電導MR装置内で高強度の膝伸展運動テストを疲労困憊まで行った。ただし,最長の運動時間を6分とした。 膝伸展運動テストの運動持続時間は,高炭水化物食摂取前で260±87.9秒,摂取後で320±46.2秒であり,摂取後において持続時間は延長する傾向にあったが統計的な有意差は認められなかった。筋のクレアチンリン酸の濃度を反映するPCr/(PCr+Pi)は,摂取前において0.86±0.04から0.21±0.04へ,摂取後において0.86±0.02から0.19±0.06へと低下した。また,単位時間当りのPCr(PCr+Pi)の低下率は摂取前と摂取後でほとんど差はなかった(摂取前;0.0028±0.0011umit/sec,摂取後;0.0021±0.0004unit/sec)。膝伸展運動による筋pHの低下の程度もまた,摂取前と摂取後において差は認められなかった(摂取前;7.06±0.03→6.44±0.21,摂取後;7.03±0.03→6.49±0.29)。これらの結果は,本研究における高炭水化物食が筋のエネルギー代謝に有益な影響を及ぼさなかったことを示唆している。被検者別に検討した場合,筋のエネルギー代謝に対する高炭水化物食の影響には先行研究で報告されたほどの個人差は認められず,したがって筋の組織化学的特性との関連性も示されなかった。
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