Project/Area Number |
08780078
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
体育学
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
池田 恵子 奈良女子大学, 文学部, 助手 (10273830)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 前ヴィクトリア時代 / スポーツ / sport / sporting / イギリス |
Research Abstract |
O.E.D.にみる‘sport'概念を検討したスポーツ概念史研究は、イギリスにおける19世紀の前半と19世紀中葉以降のスポーツの概念の相違に注目してきた。それらによれば、19世紀の前半までは、狩猟としての‘sport'の概念に特徴的にあらわれているように、主として「戸外での気晴らし」を意味し、必ずしも組織的に行なわれる厳格な競技や大筋活動、それらの要素を主たる行為特性に持つ、いわゆる「近代スポーツ」の概念とは一致しないものであった。この変容期に書き残された一定のスポーツ史史料にみるスポーツ事象の有り様は、たしかにこの概念史研究が示す傾向をおよそ傍証するものである。しかしながら、詳細な語彙分析をすすめていくと、19世紀における‘sport'の概念転換は、必ずしもスポーツ概念のきわめてドラスティックな変容を意味するものではなかった。たとえば、名詞‘sport'の概念を象徴する形容詞‘sporting'の意味に注目してみると、そこにはかつての時代から今日にいたるまでの英語‘sport'から連想される象徴的世界が踏襲されていた。しかも‘sporting'は、名詞‘sport'ほど19世紀における概念転換の事実を明確に指摘し、線引を規定することが困難なものであった。‘sporting'の形容の下で語られる対象には、狩猟、動物どうしの闘い、軍事、カ-ニバル的世界(「冗談ごと、機知、頓智、性的耽溺、虚偽体験」)等が含まれており、ゲームとしての現代的意味をもつスポーツの概念と比較すると、気晴らしや遊戯といったより包括的な意味を有す概念枠で括られうる。このことは名詞‘sport'が有する深層部分の歴史的連関性を裏づけていよう。 本研究においては形容詞‘sporting'に注目することにより、スポーツ概念史研究を実像を踏まえて分析することが有効である点を認識できた。スポーツの意味の分節化は、何が対象とされて実体性を帯びていたのかという点を抜きに論じても意味をなさない。‘sport'は名詞の集合体であるという呪縛を解き放った上で、その概念の変容を問題にする必要があろう。今後も継続してこの問題に取り組んでいきたい。
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