Research Abstract |
多くの研究により、歩行などによる運動療法が成人病の改善に有効であることが実証されてきたが、臨床現場における運動療法はその継続性に大きな課題を残している。本研究は、運動指導者がスポーツの特性を生かして積極的に関与することにより、運動療法の継続性や運動に対する意識、ライフスタイルにどのような影響を与えるのかを明らかにしようとした。 成人病を有する141名を対象に運動療法についてのガイダンスを行い、15週間の運動療法を実施した。この内36名は運動プログラム(週1回)参加群とし、残りの105名は対照群として個人で運動療法を行ってもらった。15週後のドロップアウトはプログラム群が1名(3%)、対照群28名(27%)であった。運動療法実施の評価指標とした万歩計による歩数記録を15週間継続できたのはプログラム群が34名(94%)、対照群では60名(57%)であった。 平均歩数の変化では、プログラム群は開始時8,276歩から中間時10,280歩、終了時10,264歩と歩数の増加を維持した。一方、対照群は開始時7,720歩から中間時は8,906歩と増加したものの、終了時には7,841歩と開始時のレベルに戻ってしまった。また、体力テストの結果ではプログラム群は歩行能力が有意に向上していた。 終了時のアンケートの結果では、開始時と比較して「病気がよくなった」「体調がよくなった」「運動が好きになった」などの回答率がプログラム群では高く、運動を行った結果「楽しさが得られた」「爽快感が得られた」「充実感が得られた」などの回答率も高かった。また、当然の結果であるが「仲間との交流」「新しい経験や刺激」を多く得ており、今後運動療法を継続していくためにはこのようなものが必要であると感じていた。 運動療法は実施による効果が永続するものではなく、生涯にわたって活動的なライフスタイルを持てるかどうかが重要になってくる。そのためには、運動の大切さを説くばかりでなく、運動の楽しさを体験してもらうことが大切である。これが運動療法における運動指導者の大きな役割であろう。本研究により、運動の継続性を高め、ライフスタイルを活動的に変容させていく上で、運動指導者の積極的関与の有効性が実証された。
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