Research Abstract |
本研究は,小児期にある肥満生徒を対象に,医学検査・身体組成・健康生活調査から小児成人病発症予防のための運動処方内容を検討することとした. 被検者は,奈良県天理市内K中学校生徒を対象に肥満群として11名(14.0±1.10歳),対照群として健常な生徒12名(13.8±1.12歳)に分類した.肥満者は,桂の変法を用い標準体重に対して20%以上の者とした.測定項目は,身長や体重などの体格値,肺機能検査,心電図,血圧等であった.健康生活調査は,九州大学健康科学センターが実施している「健康に関するアンケート調査」より必要な項目を抽出し,独自の質問項目と合わせて実施した.得られた結果は以下のとおりである. 1.肥満度は,肥満群が43.8±17.8%,対照群が-1.7±5.45%と肥満群が有意に高い値を示した.体脂肪率は,肥満群が38.6±6.88%,対照群が19.4±4.38%と肥満群が有意に高い値を示した. 2.生活状況について,肥満群は日常生活で昼寝をよくし,テレビの視聴時間も長い傾向にあった.また,肥満群は寝付くまでの時間が長い傾向にあった.現在の健康状態については,差は認められなかった. 3.医学検査について,肺機能は両群に有意な差は認められなかった.心電図検査の結果,肥満群に不完全右脚ブロツクを示す者が2名認められたが,特に重篤と思われる異常は両群に認められなかった.安静時血圧は,収縮期血圧は肥満群が127.3±18.64mmHg,対照群が109.3±9.55mmHgであった.拡張期血圧は肥満群が46.4±12.36mmHg,対照群が34.5±7.54mmHgであった.血圧はともに肥満群の方が有意に高い値を示した. 以上のことから,肥満群が日常における運動不足の改善が必要と考えられる.運動処方内容としては,肥満の解消を目的とした30〜60分間の有酸素運動が有効である.また,収縮期および拡張期血圧が高かったことから,強度は,中等度から低強度な内容で運動を行わせることが重要であろう.
|