Research Abstract |
本研究では,近年,全市規模の学区見直しが問題となっている多摩市を対象地域として,線形計画法を用いた学区支援システムの構築,および地理情報システム(GIS)による学区設定の空間分析を行なった.その結果,以下の知見が得られた. 1.ゼンリンの電子地図『多摩市』から取り込んだ,道路ネットワーク・行政界・小中学校の位置に関する空間データ,および平成2年国勢調査に基づく属性データをリンクさせ,多摩ニュータウンが開発された1971年以降の学区設定に関してGISで分析した結果,(1)開発初期にあたる諏訪・永山地区において,公団・公社・都営住宅のセグリゲーションが顕著であること,(2)学区の境界は交通量の多い幹線道路や標高差の大きい崖などで設定されていること,などが分かった. 2.多摩市の町丁目に基づく114地区と小学校25校を基礎単位とし,通学距離,通学困難性,学校規模,公団・公社・都営のセグリゲーション指数などを指標として,線形計画法を用いて学区設定のシミュレーションを行ない,現状の学区を評価した結果,(1)現状の学区は通学困難性,学校規模ではほぼ適正といえるが,通学距離,セグリゲーション指数からみると改善の余地が残されていること,(2)今後,小中学校の統廃合が行なわれた際,学校規模の格差は是正されるものの,通学距離,通学困難性に関して地域格差が生じるであろうこと,などが示唆された. 3.今後,必要とされる課題として,国勢調査統計区などのより細かな地域単位を対象とした,計算上大規模な問題にも対処しうるシステムづくりが実用的かつ有用であると考えられる.
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