Research Abstract |
本研究は,平成7年度の「ソフトウェア機能要求の獲得・蓄積・際利用のための演繹オブジェクト指向データベースの構築」研究計画の延長上にある.その目的は,蓄積した過去の開発事例における機能要求とそれに対する分析結果ならびに設計結果をもとにしたナビゲーションによって,ソフトウェア開発者と発注者の間の意思疎通を円滑にし,ソフトウェア生産性の向上を図ることにある.分析設計手法としてはオブジェクト指向方法論,データベースには演繹オブジェクト指向データベースを採用し,更に自然言語インタフェースの導入を試みている. 本年度は,基本的な推論機能をもつ論理プログラミング言語に永続的オブジェクト記憶を組み合わせた演繹オブジェクト指向データベース簡易版の分散環境上での実装を行っている.更に,昨年度の研究の成果であるオブジェクト識別性に対するモデル(飯島 正,「内包的オブジェクト識別性とその応用」,電子情報通信学会論文誌D-I,Vol.J79-D-I,No.10,pp.644-655(1996))と,それを分散環境へ対応させるための分散オブジェクトモデル(飯島 正,「組織構造に基づく権限の委譲を伴った分散オブジェクトモデル」,電子情報通信学会論文誌D-I,Vol.J79-D-I,No.10,pp.656-668(1996))を発展させている.自然言語インタフェースに関しては拡張した範疇文法の枠組みを利用している(飯島 正,他,「高階関数に基づく範疇文法系の日本語への適用-表層と深層の語彙主導的な対応づけ-」,情報処理学会研究報告(自然言語処理96-NL-113),Vol.96,No.56,pp.59-66(1996)).しかし,実用レベルの分析/設計のための知識を,演繹オブジェクト指向データベースの枠組みで表現する作業は現在なお進行中であり,本研究の全体的な評価は今後の重要な課題として残されている.
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