Research Abstract |
本研究では,付値マトロイド上の最適化問題に対する算法を構築することで,基本的な算法の特徴を見極めた. 付値マトロイドの独立マッチング問題に対しては,すでにMurota(1995)によって算法が示されているが,そのなかで,主算法(閉路キャンセリング法)に関しては,独立マッチングの特徴が生かされていないと思われる.独立マッチング問題に対する主算法としては,費用にビットスケーリングを施した弱多項式時間算法が報告されている.しかし,付値マトロイド上では,単に費用にビットスケーリングを施すと,付値の性質を壊してしまう可能性がある.そこで,近似最適性を導入したスケーリング法を用いた算法が拡張できることを確認した.このことにより,これまで似たものとして認識されていたビットスケーリングと近似最適性のスケーリングとの相違点がはっきりしたと言える.近似最適性を暗にスケーリングする平均閉路キャンセリング法を,付値マトロイド上の独立マッチング問題に適用すると弱多項式時間の繰り返し回数で最適解が得られることを示した.しかし,独立マッチング問題では,強多項式時間の繰り返し回数であることも示せるが,付値マトロイド上では強多項式時間を示せないという欠点がある. 具体的なネットワーク上の問題では,近似最適性のスケーリングを,暗に行うよりも陽に行った方が実際の計算時間が優れていることを確認したが,付値マトロイド上で陽にスケーリングを行うことは現在のところ理論的計算量の面から困難である. 一般化劣モジュラ問題に対しては,付値の性質によって効率の良い多項式時間の算法の構築がかなり困難であるが,非線形ネットワーク問題に対するアプローチなどを用いて検討することが必要と思われる.
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