ジーンノックアウト法を用いたH1ヒストンの機能解析
Project/Area Number |
08780593
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Functional biochemistry
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
高見 恭成 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (80236356)
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Project Period (FY) |
1996
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1996)
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Budget Amount *help |
¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | ヒストン / クロマチン / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
H1ヒストンは約200のアミノ酸よりなるリジンに富んだクロモソーマルタンパクのグループである。これらのタンパクはヌクレオソーム鎖の凝縮による高次構造形成に必須であり、クロマチンの編成に重要な役割を果たしている。さらに、普遍的リプレッサーとして遺伝子の転写制御にも密接に関与することが最近明らかにされつつある。一般に、脊椎動物には4-6種のH1バリアントが存在し、これらバリアントの発現は発生や分化、を通じて異なる制御を受けることが知られている。H1バリアントの多様性の意義については未だよく理解されていないが、機能的に異なっている可能性が考えられる。例えばヌクレオソームの凝縮程度がバリアント間で異なり、クロマチンの高次構造を変化させることにより個々の遺伝子の発現に影響を及ぼしている可能性などが考えられる。 本研究課題ではHヒストンの本来の生理的役割およびH1バリアント間での機能的相違の有無を明らかにする目的で、DT40細胞を用いたジーンノックアウト法で個々のH1バリアントの欠失変異株を作製し、変異株間での遺伝子発現の変化およびクロマチンの構造変化について検討した。 6種のH1バリアントのうち、それぞれ1つを欠失した変異株の作製に成功した。これら変異株の解析を行なったところ、形態およびgrowth速度に変化は認められなかった。変異株間での遺伝子発現の変動を、総タンパク質の2次元電気泳動パターンを比較することにより検討したところ、明らかにいくつかのスポットに特異的な変化があり、特定のH1バリアントの欠損に伴って、いくつかの蛋白質の発現に変化が認められた。すなわち、各H1ヒストンバリアントは特定の遺伝子発現に寄与していると考えられる。現在、これらの蛋白質の同定を試みている。 また、6個あるH1バリアント遺伝子を、異なるマーカーを用いて順次ターゲッティングを行ない、1個のH1遺伝子(02H1)が片方のalleleにだけ残った変異株(11/12ΔH1)が得られた。本変異株では顕著なH1蛋白量の減少が認められたが、その増殖能は野生株と変わらなかった。したがって、細胞の生存および増殖にはH1遺伝子は1コピーのみで十分であり、リンカーヒストンの減少は重大な影響を及ぼさないものと考えられる。 これらの結果は、H1ヒストンはクロマチンの構造維持等の他に、クロマチンの構造変化による特定の遺伝子発現制御を含めた固有の生理機能を担っている可能性を示している。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)