Research Abstract |
本研究では耐熱性を持つ細菌内における蛋白質の構造形成反応に関する知見を得るため,超好熱性古細菌Pyrococcus furiosus由来のシャペロニン蛋白質の均一精製及びその性質の解明を試みた。なお,本蛋白質の遺伝子はすでに得られており,今回の研究では大腸菌内でその遺伝子を発現させたものからシャペロニンを均一に精製し,その基本的な性質決定を行った。 Pyrococcus furiosus由来のシャペロニン蛋白質は大腸菌内で可溶蛋白質として発現され,90℃の熱処理,硫安分画,及び数種類のカラムクロマトグラフィーにより均一に精製された。電気泳動分析によりPyrococcus furiosus由来のシャペロニンはサブユニット分子量約5万6千のポリペプチド鎖からなり,またゲル濾過カラムクロマトグラフィー分析から室温では本蛋白質は6から8量体のオリゴマーを形成していることが明らかになった。不思議なことに,本蛋白質は精製途中にN末端部分がプロテアーゼの作用を受けやすいことがアミノ酸配列分析から明らかになり,好熱性細菌由来の蛋白質にしては意外にも不安定な一面が明らかになった。更に興味深いことに今回精製されたシャペロニンは,シャペロニンの基礎的な性質の一つであるATPアーゼ活性は観測されなかった。今後の実験の方針として,実際の蛋白質の構造形成反応における効果の有無を確かめること,更にシャペロニンとしての効果を発現する際に今回精製されたシャペロニン蛋白質が他の補助因子を必要とするかどうかを明らかにしていく予定である。
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